ばいきんまんとヘリコプタン

 「どんどんいくぞヘリコプタン、づくづくいくぞヘリコンプタン」そう誰と無しにつぶやきながら、街の中心地点にヘリコプタンは荷物を下ろした。有る者へや、赤い箱を、また別のものには青い箱を手際よく振り分けているあたり、きっとヘリコプタンが街へやってきて、荷物を配りだすことは、奇異なことでは無いのだろう。

 パトロール中のアンパンマンが中を飛んでいた。アンパンマンが不と左下を眺めると、ヘリコプタンが街の皆に荷物を配っているところだった。アンパンはヘリコプタンの傍へ舞い降りると「こんにちはヘリコプタン」と声をかける。ヘリコプタンは「いまからパン工場へいくところなんだ」とそう答えた。アンパンマンはヘリコプタンの荷物配布がまだ暫く終わらないことを見て、「じゃぁ先にパン工場に行っているね」と告げてまた空へ飛んでいった。ヘリコプタンは遠ざかるアンパンに手を振るがアンパンマン気づかないのかヘリコプタンに振り返りはしなかった。

 アンパンマンパン工場についてヘリコプタンを待っていると、すぐにヘリコプタンはやってきた。首からぶら下げた袋には小麦粉が2服も入っているようだ。ヘリコプタンはそれをジャムおじさんに渡す。「ありがとう」ジャムおじさんはヘリコプタンの小麦を受け取りながら答えた「ちょうど、小麦粉が切れそうだった」

 そのときバタ子がパンの履いた籠を持ちながら、些かきまづそうにアンパンに向かって言った。「えーと今日は、色鉛筆島と、ランドセル島と、ドレミファ島、あと街のみんなにも配達をお願い……一人じゃ大変でしょう……」だが、アンパンマン「大丈夫ですよ」と言ったとき、ヘリコプタンが遮った「ぼくもお手伝いするよ」と「色鉛筆島と、ランドセル島と、ドレミファ島だね」。バタ子は快く了承し、お礼をいった。そこで早速ヘリコプタンは最初のランドセル島に向けて飛び出した…がすぐに戻ってきた。ヘリコプタンは頭をかきながら、「もっていくものを忘れちゃった」とそういうと、バタ子やジャム、チーズ、アンパンに笑いがおきた。もちろん、ヘリコプタンを攻めるような調子では無く、ただ、こっけいで楽しいというように。

 だが、しかしその会話を盗み聞いているものがいる。バイキンマンの蜘蛛型偵察機だ。ヘリコプタンの後ろの木の陰にバイキンマン偵察機が音声と画像をバイキンジョウに送っている。それを見ていた、バイキンマンドキンちゃんドキンちゃんは「あのパンが食べたい」とバイキンマンにねだった。バイキンマンにはまた別の思惑があったが、宿敵アンパンマンを困らせてやろうと。その点で彼らは一致した。

 バイキンマンは、ドキンちゃんをバイキンジョウの有る一角に連出すと、倉庫を空けた。「ついにこいつの出番がきたようだな」そう呟くバイキンマンの前には倉庫の暗闇に光る巨大なロボットがあった。